事業所の防災対策
更新日:2023年3月30日
大規模災害は、事業所の経営にも大きな損害を与えます。災害による損害を最小限に抑え、被災後も事業を継続することは、従業員の雇用を守り地域社会の復興を早めることにつながります。
日頃から職場の安全対策に取り組み、被災後の事業継続計画(BCP)を立てておくことが重要です。従業員の生命を守り、事業と組織を守るために、事業所をあげて防災・減災対策に取り組みましょう。
事業所の防災対策の必要性
災害が発生したとき、事業所には地域社会の一員として災害対応にあたる責任があります。従業員や利用者の生命の安全を確保することはもちろん、二次災害を防止し、地域と連携して災害復旧・復興に貢献することが重要です。
また、災害で被災しても重要業務を中断せずに継続する、あるいは中断しても早期に再開することが、取引先等の利害関係者から望まれています。
1.事業所内や地域の安全を守りましょう
事業所は、従業員や利用者の安全を守るとともに、地域において被害が拡大しないよう的確な防災活動を行う必要があります。特に、大規模災害が発生したとき、行政や住民による取り組みに加え、事業所による組織的な応急活動は、被害の拡大を防ぐうえで大いに力を発揮します。
2.事業を継続して雇用や地域経済を守りましょう
被災によって事業活動が長期にわたって停滞すると、流通や小売りの停滞、雇用不安、地域経済への悪影響などが懸念されます。社会への影響を最小限に抑えるためには、早期に事業を復旧・継続できる体制を整えることが重要です。各事業所には、災害時に重要業務を継続するための事業継続計画(BCP)を策定・運用することが求められています。
事業所が行う事前対策
ある程度の規模の企業や団体では、日頃から役割分担や対応策を講じて、防災教育や避難訓練を実施しておかないと、いざ災害が発生した際に適切な手立てを打つことが難しくなります。災害に備え、平常時から組織ぐるみで取り組んでおきましょう。
1.防災対応組織を作りましょう
防災対応組織には、平常時と緊急時の2種類があります。それぞれの役割は次のとおりです。
平常時の防災対応組織
防災対策立案、防災教育、防災訓練、マニュアルの作成、備蓄品の用意、被害想定などを行うとともに緊急時の体制構築についても担当します。事業場が複数に分かれている企業や団体では、事業場ごとに担当部署を設けることが望ましいです。
緊急時の防災対応組織
事業場ごとの対策本部を中核に、避難・誘導、消火、情報収集、緊急連絡、救出・救護、施設・設備点検、従業員支援などを行います。
2.防災教育と防災訓練を実施しましょう
防災教育は、従業員の防災に対する意識を啓発し、理解を促進するために必要不可欠です。新人研修、管理職研修など比較的大きな集団を対象とした階層別研修に組み入れると同時に、事業場や部門ごとの小集団でのミーティングも定期的に行いましょう。
防災訓練を行う際には、会社の事業内容や職場状況に合わせた方法で、参加者全員が実際に災害が発生した場合を想定して取り組むようにしましょう。よりリアリティのある訓練にするために、来客役、取引先役、けが人役などを設定し訓練することも有効です。
3.事前対策をしっかりとしましょう
- 施設及び設備の安全性の確保
揺れによる什器の転倒や商品の飛び出しによって、けがをすることがあります。転倒防止対策や事業所内の施設、設備の安全管理を徹底しましょう。 - 従業員や来所者などの安全性の確保
事業者は、建物内での防災訓練などを定期的に実施し、従業員や来所者、事業所周辺の住民などの安全確保に努めましょう。 - 地域の防災活動への参加、協力
災害時、住民の対応には限界があります。事業者として、日頃から地域防災への取組に積極的に参加するよう心がけましょう。 - 防火、延焼防止対策
火災による延焼等を防ぐため、事業所内の防火対策に努めましょう。 - 建物の耐震性の確認
耐震診断等により、建物の耐震性を確認し、安全性を確保しましょう。
被災直後の対応
災害発生時の初期対応は、その後の被害の大小に大きく影響します。業務内容によって多少は異なりますが、原則的に次の優先順位にしたがって行動することが重要になります。
1.落ち着いて行動しましょう
- パニックの防止
従業員や来客者がパニック状態になると、二次災害に発展しかねません。あわてて外に飛び出すのは危険なため、机の下や柱の近くで頭部を守るよう呼びかけます。危険物のない社屋であれば、建物が損壊しない限り心配ないことを伝えます。 - 安否確認・救出・救護
部署単位あるいは事業場単位で従業員の安否確認を行います。転倒物の下敷きになっている人がいれば早急に救出します。けが人には応急手当を実施し、可能であれば医療機関に搬送します。 - 二次災害の回避
火災や爆発、危険物流出の可能性がある職場では、設備の運転を停止し、危険源の状態を確認します。事務所でも、火の始末、ガスの元栓閉め、電気機器の電源オフなどを行います。 - 連絡・情報収集
人員の安否や職場の被害状況などを緊急連絡ルートにしたがって報告するとともに、公的機関からの発表をもとに正確な情報を入手します。 - 重要データ・財産の保護
津波が迫るなどの一刻を争う状況ではなく、建物の損壊もなければ、業務継続に不可欠な重要データや財産を耐火金庫などに収納して保護します。火災や爆発のおそれがあるときは、屋外に持ち出します。 - 避難・誘導
従業員数の多い高層ビルや集客施設では、避難通路に大勢の人が押し寄せると大変危険です。事前にハンドスピーカーなどを用意しておき、被災時には避難者を誘導しましょう。
2.帰宅困難者対策をしましょう
大規模災害が発生して交通機関が停止した場合、多くの帰宅困難者が発生することが予測されます。災害発生直後に帰宅困難者が一斉に帰宅を開始すると、道路の混雑や駅周辺での混乱が発生し、救命救急活動や交通機関の復旧に支障が生じる恐れがあります。
従業員、来所者の一斉帰宅の抑制
企業、学校などの大規模な施設では、施設の責任において、従業員や学生・生徒、顧客の安全を確保するよう努めてください。また、事業者は従業員のために、3日分程度の水や食料等、物資の備蓄をしておきましょう。
帰宅困難者の一時滞在施設の提供
事業者等は、帰宅困難者の一時滞在施設や物資の提供、人的支援、その他事業者として可能な限り支援に努めましょう。
事業継続計画(BCP)
BCPとは何か
BCPとは「Business Continuity Plan」の略称です。企業が自然災害やテロ攻撃などの緊急事態に遭遇したとき、資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時や緊急時に取り組むべき対策を取り決めておく計画のことを言います。
BCPの導入効果
被災後、どのように事業を復旧し継続していくかは企業にとって大きな課題です。BCPを導入し実行できるように取り組んできた企業は、緊急時に中核事業を維持、早期復旧することが可能です。一方で、BCP未導入もしくは導入したままで事前対応や見通しが十分でない企業は、事業の復旧が大きく遅れ、事業の縮小を余儀なくされたり、廃業に追い込まれたりするおそれがあります。BCPを導入することにより、災害発生直後に必要とされる業務レベルの維持や早期復旧の実現などの効果が期待できます。
BCP導入のメリット
平常時には
- 自社にとっての中核事業やそれを支える重要事業が明確になります。また、現場の整理整頓をはじめ、設備機械の保全、在庫管理、生産性の向上など、業務改善に役立ちます。
- BCPを策定し、常に見直しなどに取り組むことで、サービスの安定供給が確保され取引先からの信頼度も向上します。
- 新規取引先の開拓において、製品・部品などの安定供給能力は自社PRに結びつきます。
- 事業継続のための教育、訓練を定期的に実施することで、社内での役割分担、指揮命令系統が明確になり、社員の防災やBCPに対する意識が高まります。
- 災害時における地域との相互扶助や企業の特徴を生かした地域貢献を可能な範囲でBCPに盛り込むことによって、地域社会からの信頼度も向上します。
災害時・復旧時には
- 指揮命令系統が有効に機能し、迅速な安否確認が可能になります。
- 平常時から施設、設備、事務所の代替の確保、災害時の即応要員、代替調達先の確保などをしておくことで、被災しても中核事業が中断せず、または中断しても短い期間で再開できます。これにより、企業の存続、顧客や社会への供給責任などを果たすことができます。
- 顧客をはじめ、従業員やその家族の安全確保を第一とした対策は、地震発生時における火災の防止、建築物の倒壊阻止など二次被害の防止にもつながります。
- 中核事業の継続により、被災した場合でも社員の雇用が確保できます。
- 地域との連携策を実施し、自社の特色を生かした地域貢献をすることで、地域との関わり合いが強まるとともに、地域全体として早期復旧を目指すことが可能になります。
事業継続のためのポイント
大規模災害が発生すると、国全体の経済にも大きな影響を及ぼします。災害に強い企業の体制づくりのために、従業員や利用者(顧客など)の安全確保、二次災害の防止に向けた事業継続の計画と管理を見直しましょう。
- それぞれの企業において、その事業内容、規模、従業員や利用者が存在する施設環境、地域特性などに適合した対策が必要です。
- 災害時に利用者が求めているもの、継続すべき商品・サービスを明確化します。そのうえで、優先業務を支えるために不可欠な経営資源確保の手段と、応急的な施設・資機材の補修・復旧計画を考えます。
- 事業継続の大前提は、従業員の安全確保です。日頃から従業員の防災に対する取組を推進し、災害発生後の行動(参照方法等)についても決めておきます。職場で被災したときに被害が出ないよう、社屋の耐震性や施設内の安全確保に努めましょう。
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